クロソラスズメダイは専業農家

地味で目立たぬクロソラスズメダイ

伊良部島ではビーチなどの浅い水深でよく見る魚ですが、色が地味で、デバスズメダイのようにふわーっと自分のテリトリーから離れるようなこともなく、いつもサンゴの隙間をちょろちょろしている、ダイバーが近寄るとやたら追い返そうとする、どちらかというと目立たない魚がクロソラスズメダイです。

クロソラスズメダイ
どうしても派手なクマノミに目がいってしまう。今回の話題は右側の黒っぽい子。

よくよく見ると必ず周りに海藻がある

サンゴの隙間をちょろちょろしているのですが、よく観察するとサンゴの隙間ならどこでも良いというわけではなさそうです。クロソラスズメダイの足元には、必ず茶色がかった緑色の丈の短い海藻が生えています。(この海藻がまた地味なので、地味な絨毯の上に地味な魚という、まるで「俺たちに構わないでくれ」というような風景)

クロソラスズメダイ
周りにあるのはイトグサ。前の写真でもわかるように、どの子も同じ海藻の周りにいる。

どの子も同じ種類の海藻の上にいた

近い場所にいる子も離れた場所にいる子も、同じ種類の海藻の周りをちょろちょろしています。クマノミとイソギンチャクの関係のように、クロソラスズメダイとこの丈の短い海藻との間にも何やら怪しい関係がありそうです。この海藻が他の魚には危険な存在なのか?!

イトグサとのラブな関係

ネットで調べてみるとこの海藻とクロソラスズメダイには深ーい関係があることがわかりました。

海藻の名前はイトグサ。

クロソラスズメダイの唯一の餌なのだそうです。だから、クロソラスズメダイはイトグサを大切に育てており、別の海藻が生えようとすると掃除してしまうのだそうです。いずれは餌となる身のイトグサもクロソラスズメダイのお力を借りなければうまく育たないらしい。

サンゴの隙間をちょろちょろしているように見えたのは、自分の畑をまめに管理している姿だったのでしょうか。

クロソラスズメダイには色違いもいる?

さて、毎日海に潜っていると形はそっくり、でも色が違うというクロソラスズメダイを発見することがあります。白黒色分けのパンダのようなスズメダイです。黒のスズメダイと白黒パンダのスズメダイが入り混じるようにイトグサ畑の数十センチ上に、ふわっと浮いていることもありました。その時は何故かちょろちょろせず、同じ水深を保ちながら集まって、ただふわっとしているだけでした。

これは繁殖行動の前触れかも。

クロソラスズメダイ
色違いの子はどうやら婚姻色のよう。オス?

いつ産むの?

調べていると、だんだんこの地味な魚が好きになってきました。

どうやら白黒パンダはクロソラスズメダイの婚姻色らしい。東海大学紀要 第45号に「スズメダイ科魚類の繁殖習性と卵・仔魚の形状」という論文があった。この論文から推測すると、白黒パンダはオスの可能性あり!(人間界は女性が華やかですが、自然界はオスが華やかなことが多いみたい)

さらに産卵の時刻まで考察されていました。どうやらクロソラスズメダイの産卵は早朝の2時から3時ごろらしい。ものすごく早起き。

また、繁殖行動のために体色を変えるのは、早い種類で1週間ほど前からだというので次に発見したら超早朝ダイビングを1週間がんばれば繁殖行動が見られるかもしれません。

ダイビングで見つけたら観察してみて

最初は近づくと反撃してきたり、かじり付いてきたりする地味なくせに乱暴な魚だと思っていました。

でも毎日顔を合わせていると気になってきます。まだ繁殖行動まで見ることはできていませんが、地味なこの魚を気にして観察しているうちに、食生活のこと、働き者だということ、繁殖行動まで調べてしまいました。

ダイビングに参加したら、気になる魚の色や形を覚えて、陸に上がってから図鑑で調べてみてください。意外な習性がわかって面白さが倍増するかもしれません。特にこの子は体験ダイビングでもしっかり観察できますから楽しく観察してみてくださいね。

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