ポセイドン・リブリーザー 各部の働き

ポセイドンリブリーザー

今回はMk6の各部の働きについて紹介していきます。同時に、なぜその仕組みが必要なのかについても触れていきたいと思います。ここで使用している図の多くは POSEIDON SE7EN User Manual からお借りしています。

マウスピース

Mk6のマウスピースは、右側にあるレバーでCC / OCモードの切り替えとループの開閉を同時に行うことができます。

CCモード

CCモードはクローズド・サーキット・モードのことです。レバーを立てるとCCモードになり、呼吸ループが開き、ダイバーはループ内のガスを吸えるようになります。通常はこのポジションでダイビングをします。図のレバー位置はCCモードです。

OCモード

OCモードはオープン・サーキット・モードのことです。レバーを前に水平まで倒すとOCモードになり、呼吸ループは閉じてマウスピースは一般的なOCレギュレーターに早変わりします。Mk6のマウスピースには小型のOCレギュレーターが組み込まれています。

ベイルアウト

呼吸ガスやガスの制御に問題が発生した、または、その可能性がある場合、電子モジュールはダイバーに警告を発します。警告があったらすぐにダイバーはOCモードに切り替える必要があります。OCモードなら確実に安全なガス=ディリュエントガスを吸うことができるからです。このようにCC呼吸からOC呼吸に切り替えることをベイルアウトすると言います。

注意点

レバーの切り替えは呼吸ガスの切り替えと同時に呼吸ループの開閉も行なっています。呼吸ループが開いた状態(レバーが立っている状態)でマウスピースを水中につけると呼吸ループが水没してしまいます。これは重大な問題を引き起こすことがあります。

CCモードにして良いのはダイバーがマウスピースをくわえている時だけです。マウスピースをくわえる前にCCモードにしてはいけません。また、CCモードのままマウスピースを外してもいけません。これはMk6ダイバーとしての大切な習慣です。

呼吸ループを水没させてはいけない理由

水没の程度によりますが、呼吸ループが水没すると「スクラバーのCO2吸着能力が低下する」「スクラバーの化学成分と海水が混ざり強アルカリ溶液が作られる」などの問題が起きる可能性があります。呼吸ループで発生した強アルカリ溶液をダイバーが吸い込むと、ダイバーは気管や肺に重大な損傷を受けます。水没の原因には「点検不良」「装置がひどい損傷を受ける」「水中でループを開いたままマウスピースを口から外す」などが考えられます。

多くのダイバーは水中で無意識に口からマウスピースを外すという習慣がありません。水中でマウスピースを外す際は「わざと外す」ということになり、それなりに慎重になりますから、レバーを倒し忘れることはまずありません。ベイルアウトの警告が発生するとダイバーはあわてるかもしれません。しかし、MK6ではベイルアウトする機構とループを閉じる機構が一体になっているため、慌ててベイルアウトした結果ループが水没するということも起きないでしょう。

しかし、水面に上がるとすぐにおしゃべりを始める、すぐに外の空気を吸いたがるというようなダイバーはその習慣を変える必要があります。無意識にレギュレーターを口から外す習慣を持っているので、Mk6のマウスピースも無意識に外してしまいます。また、何かで慌ててマウスピースを外すときも同じです。

マウスピースをくわえてからレバーを起こす、レバーを倒してからマウスピースを外すという習慣を身につけてください。

Tポート

マウスピースを出た呼気はホースを通って「水分分離ポート」に到達します。このポートはT字型をしているのでTポートと呼んでいます。

右Tポート

マウスピースと右Tポートの間にあるホースに水分が溜まることはよくあることです。呼気には多くの水分が含まれているのでホース内で結露しますし、何か楽しいことでダイバーがニヤッと笑えば、口とマウスピースの隙間から水分がループ内に侵入してしまうことだってあります。このような水分を呼気と分離し、背中のスクラバーハウジングまで水分が回らないように防ぐのが右Tポートの役割です。

左Tポート

右Tポートで分離できないような大量の水分がマウスピースから侵入すると、水分は右Tポートを超えて背中のスクラバーハウジングに達してしまいます。侵入した水分はスクラバーと混ざって強アルカリ溶液となります。このアルカリ溶液が左ホースを通りマウスピースに達すると、ダイバーはアルカリ溶液を吸い込んでしまうでしょう。万一、アルカリ溶液が作られてしまっても、溶液とガスを分離し、ダイバーの口元まで溶液が回らないように防ぐのが左Tポートの役割です。

カウンターラング

カウンターラングは息を吐くと膨らみ、息を吸うと萎む袋です。

右カウンターラング

右カウンターラングは呼気を一時的に溜める袋ですが、右Tポートで分離した水分を溜める役割も持っています。右カウンターラングの下部にはドライスーツの排気バルブと同様のオーバー・プレッシャー・バルブ (OPV) が取り付けられています。このバルブは余分なガス(膨らみすぎたガス)を排出するためのものですが、余分な水分を排水することもできます。

左カウンターラング

左カウンターラングは再生したガスを一時的に溜める袋です。通常、左カウンターラングに水分が溜まることはありません。しかし、左Tポートの項で説明したトラブルが発生した場合はアルカリ溶液が溜まることになります。

スクラバーハウジング&スクラバー

スクラバーハウジング

背中の中央にある黒い円筒形のケースです。ケースの中にはCO2吸着剤であるスクラバーが入っています。ケースの上部は電子モジュールを取りつけられるようになっています。また、ハウジングの左右には酸素とディリュエントシリンダーを取り付けることができます。呼吸ガスは右側のホースからハウジングに入り、再生されたのち、左側のホースからマウスピースに向かいます。

スクラバー

スクラバーはソフノライムとも呼ばれています。水酸化カルシウムを主成分とし、二酸化炭素と結合して炭酸カルシウムに変化します。この化学変化を利用してリブリーザーは二酸化炭素を取り除いています。Mk6では、あらかじめ円筒形のプラスチック容器にパッケージされたスクラバーを使用します。パッケージのスクラバーは390Lの二酸化炭素を吸収する能力があります。

電子モジュール(Eモジュール)

電子モジュール本体

電子モジュールは内臓の各種センサーから、水圧、ガス圧、温度、潜水時間、O2濃度などの情報を収集し、組み込まれたソレノイドバルブ(電気的に開閉する弁)で必要なO2を呼吸ループ内に噴射します。電子モジュールには減圧プログラムも組み込まれているので、センサーからの情報をもとにリアルタイムでの減圧情報を提供します。ダイバーはプライマリーディスプレイで必要な情報を確認することができます。組み込まれているのはスエーデン海軍用に開発されたDCAPという減圧計算モデルです。

酸素センサー

電子モジュールに組み込まれた酸素センサーの寿命は1年から1年半程度です。酸素センサーは酸素濃度に比例して電気を起こすバッテリーのようなものなので、内部の化学物質が消耗したら交換します。しかし、交換する時期が明確ではないので、潜水中にセンサーが不調を起こすことは想定されます。そこで、多くのリブリーザーは3つのセンサーを内臓しています。一つが故障しても残りの二つの数値が近似値を示せば、その数値を正しい数値として採用するシステムです。二つ以上のセンサーが同時に故障することは考えにくいからです。

Mk6は違う方法でセンサーの精度確認を行っています。5分に1回、センサーに少量の酸素を吹き付け、センサーの反応をプログラムが監視するという方法です。積極的にセンサーのテストを自動で繰り返すという方法はユニークな方法です。方法が異なるため、Mk6が使用する酸素センサーは2つです。

情報提示装置

口元についているのがHUD、杓文字のようなものがプライマリーディスプレイ。

プライマリーディスプレイ

電子モジュールが計算した減圧情報や酸素分圧の情報、深度、経過時間、警告や指示などダイバーが必要とする情報をダイバーに提供するのがプライマリーディスプレイです。プライマリーディスプレイにはバックライトが内臓されており、外部の明るさを感知して自動で明るさを変化させます。このディスプレイは別売りのガウントレットで左腕に取り付けられるようになっています。

※ 表示内容についてはユーザーマニュアルを参照してください。

HUD

HUDはヘッドアップディスプレイの略で、マウスピースの上に取り付けられた情報伝達装置です。プライマリーディスプレイのように詳細な情報を受け取ることはできませんが、電子モジュールが何か警告を発するとHUDは赤色に点滅してダイバーにプライマリーディスプレイを確認するよう促します。また、Mk6のHUDには振動装置も組み込まれており、HUDが目に入っていなくてもHUDの振動でダイバーは警告を感知することができます。HUDにはOC/CC切り替えレバーのポジションを感知するセンサーも組み込まれています。

警告について

光による伝達

HUDに組み込まれた赤色LEDの点滅でダイバーに異常を知らせます。LEDが点滅した時はすぐにプライマリーディスプレイで警告内容を確認しなくてはいけません。赤色LEDは電子モジュールに組み込まれたバッテリーにも取り付けられています。このLEDは背中側にあるためダイバー自身が確認することはできませんが、そのダイバーに異常が発生していることをチームメイトに知らせてくれます。チームメイトはこの点滅を見たら、ダイバーの状態を確認する必要があります。

音による伝達

電子モジュールは警告音も発します。電子モジュールがダイバーの頭の後ろに位置しているため、この警告音ははっきり聞き取ることができます。

振動による伝達

HUDに組み込まれた振動装置による警告です。音と同様、非常にはっきりとわかる警告です。

表示による伝達

どのような異常が起きているのか、また、何をすべきかがわかるようにプライマリーディスプレイは文字の点滅やアイコンの表示で異常をダイバーに知らせてくれます。

シリンダー

酸素

純酸素を充填します。シリンダーサイズは3Lで充填圧力は130barです。材質はアルミ製でもスチール製でも構いません。酸素シリンダーはダイバーの右肩側に配置します。

ディリューエント

潜水計画によりガスの種類を変えて充填します。空気(酸素+窒素)、ナイトロックス(酸素+窒素)、トライミックス(酸素+窒素+ヘリウム)などを充填することができます。左側に配置します。

酸素残圧でスクラバー残存能力を知る

ダイバーの体が消費する酸素 1 に対して生産される二酸化炭素は 0.8 程度です。生産される二酸化炭素が消費された酸素の量を上回ることはないので、この比率を大雑把に 1:1 ということにしておけば、ダイバーは酸素の残量を知ることでスクラバーのおおよその残存能力を知ることができます。

Mk6のスクラバーのCO2吸収能力は390Lなので、酸素シリンダーの充填量も390Lにしておきます。そうすれば、消費と生産の 1:1 の関係から、酸素がなくなった時にスクラバーの吸収能力もなくなると考えることができるからです。この簡単な方法を使うためには次の3点を守る必要があります。

  • 有効期限内のスクラバーを使うこと
  • 酸素シリンダーへの充填は390Lを超えないこと(3Lなら130bar)
  • 酸素の再充填時にはスクラバーも新品に交換すること
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